変わりゆく確定申告
- 陽平 丸山
- 2023年1月28日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年3月3日
年が明けると、もうすぐ確定申告の時期か、と毎年思う。
個人の方の確定申告は、現在では、各税務署の個人課税部門が担当している。
私は、国税組織では、そのほとんどを個人課税部門に所属していたので、
迫りくる確定申告に、今年もまた来たな、と身構えるのだ。
個人課税部門の職員にとって確定申告は、相談会場の準備や運営、
そしてもちろん、納税者の方々の相談への対応、さらには、提出された申告書の処理などに追われ、大忙しの時期だ。
個人課税部門の職員は、定申告期間の前後1ケ月を含め、約3か月を気力と体力で乗り切ることになる。
確定申告は、この30年で大きく変わった。
私が税務署に勤めたばかりのころの確定申告会場は、職員と納税者の方が、1対1でお互い向き合って座り、職員が、納税者の方に質問しながら、申告書を手書きで記載していた。
今では考えられないが、机には灰皿があり、お互いタバコを吸いながら、事業のことだけでなく、生活費や趣味の話をして盛り上がったところで、
「じゃあこれぐらい所得がないと生活できませんよねぇ~」と切り出し、
税務調査さながらに、申告書を作成し、ときには、過去の申告内容を是正して修正申告を勧奨することもあった。
ところが、平成11年から、確定申告会場では、
机をロ(ろ)の字に並べて、職員がロ(ろ)の中に入り、納税者の方にはロ(ろ)の外側に座り、少ない職員数で相談する複数相談体制となった。
(牛丼店のチェーン店が、似ていると思う。カウンターの外に客が座り、中の店員が数名で対応する感じ。)
そうして確定申告会場では、職員が申告書を書かずに、納税者の方に、自分で申告書を書けるようになるためのアドバイスをするという体制へと移行していった。
平成14年頃には、パソコンの画面をタッチして申告書を作成するタッチパネル方式が導入された。現在のスマートフォンでの確定申告書の作成画面を大きくしたようなものだ。
そして、平成19年から国税庁HPの確定申告コーナーで作成できるようになり、現在のパソコンがずらりと並ぶ状況となった。
相談会場に来られた納税者の方に、実際に、パソコンで申告書を作成していただき、翌年以降は、ご自宅のパソコンで申告書を作成できるようになってもらおうという施策であった。
このころから、会社員の医療費控除や、給与を複数個所からもらっている方、年金と給与の両方を受けている方などの申告が増えた。
私も、確定申告会場で従事することも多かったが、還付金の確定申告のつもりが、結果、納税となる場合もあり、納税者の方に説明する場面も多々あった。
令和に入ると、スマホ用の申告書作成画面が登場した。
相談会場においても、スマートフォンでの申告書を作成のためのコーナーを設けるなどして、多くの納税者の方にご利用いただいた。来年は自分でできると好評であった。
令和4年分からは、青色決算書や収支内訳書もスマホ専用画面で作成できることとなり、ますます進化している。
このように、確定申告のIT化が推進されているにもかかわらず、正直なところ、この30年で、税務職員にとっての、確定申告の大変さは、あまり変わっていない。
というのも、パソコンやスマートフォンで申告書を作成・送信してもらうことは、職員が楽をするために行っているのではないからだ。(もちろん楽にもなってほしい。)
毎年、相談会場が大混雑しており、相談に来られた方を長時間待たせることがないようにしたい、始めて申告される方や、消費税の申告の必要な方など、本当に相談が必要な方の対応をしたいためだ。
今後はマイナンバーの活用が進んで、ますます確定申告は進化していくことと思う。
いずれにせよ、相談会場は、短期間に多くの納税者の方々と接する機会であり、その経験は、様々な業種業態を学ぶことができるとともに、(あまり好感を持たれていない税務職員が)アドバイスにより感謝されたりと、税務調査とは異なる充実感があった。
令和4年分の確定申告は、税理士として初めての確定申告だ。
2月には、中村税務署の確定申告相談会場で、税理士として、スマホ申告等の指導をさせていただく予定となっている。
どうぞよろしくお願いします。
おそらく、納税者の皆様は、確定申告が近づいてきたなと、重々しい気分になっておられるのかな、と想像します。
ご質問・ご相談があれば、気軽にご連絡くださいね。
もしも、申告会場でお会いできたら、ぜひお声掛けください。

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